「Napalm=ナパーム」はバンクシー作品の中でも、最も政治色が強く、風刺が利いている作品かもしれない。
また「Napalm」には別名「Can't beat that feeling」というタイトルもある。
あなたはこの作品がベトナム戦争で有名な写真がベースになっていたのをご存知だろうか。
ナパーム弾から逃げる少女

この写真は1972年ベトナム戦争末期に撮られたAP通信のカメラマン「ニック・ウト」が撮影したものだ。
ナパーム弾で立ち上る黒煙を背に必死に逃げる子供たち。そして、ナパーム弾でやけどを負い、泣き叫びながら裸で逃げる少女を捉えたこの写真はピューリッツァー賞を受賞。理不尽なベトナム戦争の恐怖と残酷さを伝える象徴的な写真だ。
ちなみに「ニック・ウト」はこの写真を撮ると、自分の車に子供たちを避難させサイゴンの病院まで送り届けたそうだ。
Napalm 2004

エディション作品の「Napalm」は2004年に発売。サインなしが限定500枚、サイン入りが限定150枚発売された。
そして サイズは縦50cm x 横70cm。バンクシーの作品に多いサイズの作品だ。
作品の意味とは...
まず、作品の両脇にアメリカの資本主義を象徴する「ミッキー」と「マクドナルドのドナルド」を置き... そして、この2人は笑顔でベトナム人の少女の手を握っている。しかし、少女は恐怖に泣き叫んでいる。
「ミッキーとドナルド」表面上は優しくしているように見える。しかし、実は少女を恐怖のどん底に連れて行こうとしているのかも知れない
この2人の間にナパーム弾から逃げる少女を描くことで、軍国主義、資本主義を強烈に批判しているのかもしれない。
ちなみに、少女は当時9歳。ファン・ティー・キムフックという名前だ。爆撃を受け酷い火傷を負った。しかし。14カ月におよぶ入院と17回の手術を経て奇跡的に助かった。そして、現在はカナダで暮らしている。
作品のメッセージ性を強調するためか、背景はグレーになっている。風刺たっぷりでメッセージ性が濃い作品だ。
暴力。権力。国民性。偽善。陰謀... 色んな要素が一つの作品に込められたバンクシーらしい作品だ。
Napalm Serpentine edition 2006

次にこちらは「Napalm」の特別版の作品だ。背景は白で、ドナルドの足下にドリップを施している。こちらは2022年-23年に、日本中で開催された「バンクシーって誰?展」に展示された作品だ。
この作品はシルクスクリーン印刷ではない。なので、これはおそらくテストバージョンなのかもしれない。
ダミアン・ハーストと「Napalm」

ちなみに、英国を代表する現代アーティスト「ダミアン・ハースト」も「Napalm」を所有していた。
バンクシーは2015年に開催したアート版テーマパーク「ディズマランド」にダミアン・ハーストを招待し、ディズマランド内のギャラリースペース「The Galleries」でダミアン・ハーストの作品を展示。
バンクシーとダミアン・ハースト、どちらもブリストル出身。お互いの間にはリスペクトがあるのだろう。ちなみに、バンクシーの作品には、ダミアン・ハーストの作品をオマージュしているものも多い。そして、ダミアン・ハーストの個展にバンクシーの作品が展示されたこともある。
英国を代表する現代アーティスト「ダミアン・ハースト」も愛した「Napalm」は今後新たなバージョンが制作されるのだろうか?また新しい「Napalm」が登場したら、ここで紹介していきたい。