2019年6月28日、若干25歳のイギリス人ラッパー「Stormzy(ストームジー)」はイギリスで開催された世界最高峰のロック・フェスティバル「グラストンベリー」のヘッドライナー(トリ)を務めた。
イギリス出身、黒人のソロ・アーティストがヘッドライナーを務めるのは、グラストンベリー49年の歴史の中で初めての快挙だ。
ストームジーはブラック&ホワイトのユニオンジャック柄の防弾チョッキならぬ、防刃チョッキを着てステージに登場した。
そのパフォーマンスの翌日、Banksy(バンクシー)は自身の公式インスタグラムで、最新投稿をアップ。
その投稿がこちら
コメント欄には、こう書いている。
I made a customised stab-proof vest and thought - who could possibly wear this?
Stormzy at Glastonbury.
日本語にすると、こんな感じだろうか。
カスタムメードの(防弾チョッキならぬ)防刃チョッキを作って、「誰が着たらいいか」考えた。そうだ、グラストンベリーのストームジーだ!」
【2019年7月26日追記】上の投稿から約1ヶ月後の7月25日、バンクシーは自身の公式インスタグラムにこんな最新動画を投稿。
この短い動画の中で、グラストンベリーのステージに上がる前にストームジーが防刃チョッキを着る様子。そして、このチョッキがバンクシーが作ったものだと知り、大舞台を前に、興奮を隠し切れないストームジーの様子が映し出されている。
投稿のコメント欄には、こう書いている。
Who knew moving into gents tailoring could be this much fun? A vest that’s capable of stopping bullets up to .45 calibre.
And yet it’s not machine washable.
少し難しいが、日本語に訳すとこんな感じだろうか。
男性の服を仕立てるのがこんなに楽しいなんて知らなかった。このチョッキは45口径の弾薬も防弾できる。でも、洗濯機で洗えない…
バンクシーがこの作品(防刃チョッキ)で伝えたかったこと...
10年以上前から、ロンドンを中心にイギリスはナイフによる犯罪の増加に悩まされている。
そして、そのナイフの犯罪においてメディアに取り上げられるのは、いつも黒人の若者やマイノリティーばかり。
グラストンベリーのヘッドライナーを務めたストームジーはロンドン南部のクロイドン出身。クロイドンはナイフによる犯罪が多発する危ないエリアとしても有名だ。
ストームジーは今回のパフォーマンスで、バンクシーが制作した防刃チョッキを着て、ナイフなどによる犯罪が増加していることを訴えるなど、黒人の若者が直面している不平等を強調する政治的なステージを見せた。
ステージ背後のスクリーンには、ロンドンで多発するナイフ犯罪に関する統計や声明が映し出されていた。
メディアを利用し、ストームジーをサポート!
バンクシーがインスタグラムで投稿することで、世界中のメディアがバンクシーの最新動向を取り上げる。
バンクシーは「新聞やメディアの一面を飾るのは、ナイフによる犯罪ばかりだけど、ナイフ犯罪が多発するエリアから、こんな素晴らしいアーティストだって生まれるんだ!」と、世界中のメディアを通して伝えたかったのかも知れない。
バンクシーらしい粋なはからいだ。
P.S.ちなみに、ストームジーは今回のグラストンベリーで、メイ首相が辞任した後、次期英国首相の有力候補と見られているボリス・ジョンソン氏を非難する曲も披露している。ボリス・ジョンソン氏は、バンクシーとは反対に、EU離脱(ブレクジット)賛成派である。
バンクシーは、つい先月(6月)反ブレクジット作品を英国王立芸術院のサマーエキシビションに展示したばかりだ。