2018年10月5日)、英国のオークションハウス「サザビーズ・ロンドン」で、Banksyのキャンバス作品「Girl with Balloon」(一点物) が 落札直後にシュレッダーに掛けられる という、オークション史上初、前代未聞の事件が起こった。
衝撃! Banksy がオークション翌日、SNSにアップした動画に写っていたものとは.....
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バンクシーが自身の公式インスタグラムへ投稿した動画には、数年前にバンクシーが額縁の中に自分でシュレッダーを埋め込む様子が出てきます。
(注:バンクシーは '数年前' と表現している。しかし、シュレッダーを動かす動力となる乾電池がそんなに持つの?と不思議がる声もある。)
A few years ago, I secretly built a shredder into a painting. In case It was ever put for auction...
「数年前、俺はこの作品にこっそりシュレッダーを仕込んでやった。万が一、オークションに出品された時のためにね。」
その後、ご存知のように、落札のハンマーが鳴る。
そして、その直後、作品がシュレッダーで切断。 会場内が騒然。
最後に、作品が運び出される様子で動画は終わる。
最後に、SNSのコメント欄には、ピカソのこんな↓言葉も残している。
The urge to destroy is also a creative urge" - Picasso
「いかなる創作活動も、初めは破壊活動だ。- ピカソ - 」
Banksyのパフォーマンスの一部始終、どうだった?
長年、バンクシーを追ってきているあなたなら、今回のことはきっと想定内のことだったでしょう。「だろうな。」という言葉が思わず口を衝いて出てきたかも知れない。
上の作品は、2007年にPOWから発売された「Morons」という作品。
作品中、右側の額縁の中に書かれているメッセージはこちら。
「I Can't Believe You Morons Actually Buy This Shit.」
(こんな、糞な作品を高額で落札する、お前らみたいな愚か者が信じられない。)
バンクシーはこんな作品も過去に出していました。
Banksyの '意に反して' 作品はさらに高騰する?
2016年、ローマで開催された Banksyのエキシビション「War Capitalism & Liberty」のキュレーターでもあるアコリス・アンディッパ。 彼はニューヨーク・タイムズのインタビューにこう語っている。
バンクシーの今回のパフォーマンスは、オークションハウスのやりすぎを批判するメッセージが込められていたと思います。
そして、今回のパフォーマンスによって、バンクシーの作品価値はかなりの確率で高騰するでしょう。
バンクシーは、グラフィティアートを売買する目的でストリートに描いてきたわけではない。が、そこにはいつもあるメッセージを込めている。
そして、それを高値でやり取りするオークションハウスには、いつか一泡吹かせてやろうと考えていたのだろう。
さらに、複数の専門家達は「作品の下半分がシュレッダーにかけられた 'Girl with Balloon' の価値は少なくとも2倍は上昇する。」と話している。
細断された作品のタイトルは「Love is in the bin」に決定!
大勢が見守るオークションの最中、突如、制作されてしまったアート史上初の作品「Girl with Balloon」は、落札後「Love is in the bin」という新しいタイトルを作者であるBanksyから与えられ、Pest ControlからもBanksyの作品としてCOA(本物であるという証明書)が発行されることになった。
ところで、
約1億5000万円で落札した当事者は、作品が細断されても予定どおり購入するのだろうか?
作品を落札したのは、名前は公表されなかったがヨーロッパの女性だ。そして、サザビーズによるとサザビーズの長年の顧客とのこと。
作品の落札価格はそのまま(約1億5000万円)で購入されることが決まった。また、落札者は次のように答えている。
When the hammer came down last week and the work was shredded, I was at first shocked, but gradually I began to realise that I would end up with my own piece of art history.
「落札が決まった直後に作品がシュレッダーで切断されたときは、すごくショックだった。でも、時間が経つにつれ、アートの歴史に残る作品を手にするんだということに気がついたわ。」
当初、今回のパフォーマンスは、「サザビーズとBanksy(バンクシー)が組んでやったことではないか?」との憶測が飛び交っていたが.....
まず、バンクシーの元代理人、スティーブ・ラザリデスはこう語っている。
バンクシーと共に12年間仕事をしたけど、バンクシーがオークションハウスのような機関と組んで、あんなパフォーマンスをするなんて考えられない。彼の哲学に反している...
最後に、もう一つ。
この日、本当は別のアーティストの作品が注目されるはずだった。それは.....
Banksy (バンクシー) にかき消されてしまった、史上最高落札額の残念な作品。
実は、Banksyの作品が落札された同じ日、スコットランド出身の女性アーティスト「Jenny Saville」 のセルフ・ポートレート作品「Propped」が 約14億円で落札されていた。
本来なら、現存する女性アーティストとして最高落札額だったこの作品に注目が集まるはずだった。しかし、見事、バンクシーのパフォーマンスにこのニュースはかき消された。
破壊なくして創造なし。
世界中の関心を自分に向けたBanksy。
「俺は既存のルールには取り込まれない。俺は俺のルールで勝つんだ!」
と、メッセージを投げかけているようだ。